プラトニック・ラブ
「迅…」
名前を呼んでももちろんどこからも返事はない。
あたしは危うい足取りのまま階段を下りて行く。
どこにいるのか分からない。
家の中にいるかどうか分からない。
いたとしてもどこにいるか分からない。
けれど家中の部屋を全て見ていくほど気力も体力も回復していない。
「…はぁ…っ」
ただでさえ長い階段。
39度近い熱を持っている体には辛い。
時折階段に座って大きく息を吐く。
そしてまた歩き出す。
自分が何してるのか分からない。
自分が何したいのか分からない。
迅が家の中にいる可能性は低い。
普通なら仕事をしてる時間。
でも会いたくて。
ただ会いたくて。