プラトニック・ラブ
あたしは毛布の中で視線を泳がせる。
苦しながらでも、なんとか諦めてもらおうと必死に言葉を探す。
「だって…ほら、櫻井グループの息子が料理なんて作らないでしょ…?」
そう言った途端、迅は急に静かになってしまった。
そんな迅を不思議に思ったあたしは、毛布から目だけを覗かせる。
「………!」
ハッとした。
思わず息が止まった。
迅の瞳が―――悲しさに揺れている気がしたから。
言葉を吐き出したいのに、クっと喉が鳴って言葉が出てこない。
毛布をそれ以上上げることができずに、両目をギリギリ出したまま止まってしまった。
どうして…そんな悲しい顔するの…?
見たことのない、悲しみに染まったその表情は、あたしに悲しい感情を流し込んでくる。
「………あっそ」
ふいっと一方的に逸らされた視線。
あたしは視線を逸らせずに、迅の背中をずっと見つめている。
迅は皿を持つとそのまま何も言わずに部屋から出て行ってしまった。