プラトニック・ラブ




裏路地の近くで話している1組の男女。


薄暗くて見えないはずなのに、最悪にもそこの近くには電灯があって、見たくなかった男女の顔が見えてしまった。



―――迅と海さん。



どうして2人が…一緒にいるの…?



何か、紙のような薄っぺらい物を持っている迅。


それを海さんに渡そうとしているようだけど、海さんは何度も首を横に振っている。



2人ともあたしがいることに気づいていない。



見たくない。


なのに見てしまう。



何をしてるの…?



こんなことはあたしが訊くことじゃない。


訊いちゃいけないことぐらい分かってる。



あたしは〝偽り〟の〝妻〟。


本物なんかじゃない。



偽りの関係。



そんなこと分かってるのに。


何度も言い聞かせているのに。



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