プラトニック・ラブ
待ってと腕を掴んで引き止めて、本心を恐れることなく口にしていたら何か変わっていただろうか。
少なくとも今の状況よりは良くなっていたかもしれない。
けれどあたしにはそんな勇気はなかった。
追いかけることすらできなかったあたしに、本心を口にすることなんてもっての他だった。
ぐずぐずと鼻をすすりながら涙を零し続けるあたしがやっと放った言葉をきっかけに、佐藤さんは笑みを絶やさないまま言葉を続ける。
「分からなくていいんだ。思ったことを口に出してみ?」
そんな些細な言葉が胸に響く。
頭も心もパニックでどうしたらいいか分からない状況の中、あたしは想いを次々言葉にした。
「近づくほど…ふ…っ迅を知ってしまうほど…離れたくないと思ってしまう…から…っ」
「うん、だからどうしたいんだ? どうしてほしいんだ?」
どうしたいか。
それはあたしが最も分からないこと。