プラトニック・ラブ
「わりと大きな怪我をしていたんだろう。 瑠璃より倍の体重と言ったら大袈裟かもしれないけれど、その位の女の子を背負って急いで保健室へ向かっている瑠璃を見たのが始まり」
思い出す。
そんなこともあった。
迅の家でバイトを始める少し前だった気がする。
骨折したもんだと思い込んでいたあたしは彼女を背負ったまま急ぎ足で保健室に向かったのに、結局軽い捻挫だったという恥ずかしい結果に終わったやつだ。
まさかそんな場面を迅に見られていたなんて。
なんて恥ずかしい。
「それからなんだろうね。 気づくと目で追ってた」
いや、目に付いたかな、なんて迅は笑いながら言う。
あたしは何だか恥ずかしくなって何も言えなかった。
「元気な子だなって。 何だか話してみたくて、でもこんな俺がいきなり話しかけたりしたら警戒するだろ?」
「うーん…確かに…」
息子だと知らなかったから、いきなり校内で迅に話しかけられたらビックリするだろう。
そして警戒するに違いない。
迅の予想はぴったし当たっていた。