プラトニック・ラブ
そんなあたしの不安な心の声が表情に表れていたのかもしれない。
あたしの顔を見つめて迅は小さく笑うと、婚姻届の端と端を掴み、
「もうこんなくだらないもので縛り付けたりはしない」
そう言ってはビリッと勢いよく婚姻届を縦に裂いた。
見事なまでに、心地良いとすら思える音を立てながら切り裂かれた婚姻届。
迅の手からスルリと静かに落ちていく婚姻届を目の端で追う。
すると迅はあたしの頭をポンポンと撫でては、
「今、俺らにこの紙は必要ない」
優しく笑いながらそう続ける。
なんとなく、その言葉の意味を理解した。
婚姻届は今のあたし達にとっては〝縛り付ける〟だけのものでしかないと、迅は考えているのかもしれない。
確かにそうなのかもしれない。