プラトニック・ラブ
「わ…忘れてた…」
「お馬鹿」
「………」
思わず声が出てしまった。
彼の背中を見つけた瞬間、どうしてもその名前を呼びたくなってしまったんだ。
我慢しなくては。
この関係を知られたくないし、壊されたくはない。
「そう言えば、何か用があった?」
「あ、そうだった」
用があったから彼の名前を呼んだんだ。
すっかり忘れそうになっていた。
あたしは迅の顔を見上げ、なるべく小声で言った。
「今日の夕飯はグラタンだよ」
どうでもいいことだった。