プラトニック・ラブ
あたしはその視線を逸らすことすらできなくて、喉に溜まった唾を飲み込むことが精一杯だった。
そしてソイツはゆっくりと口を開け、不機嫌なんてもんじゃないくらい不機嫌な声―――恐ろしいと感じるほど低い低い声で言った。
「気分を害した」
そう唸るように呟くと立ち上がった。
大声で怒鳴りつけられるのも恐ろしいけれど、こうして低い声で呟かれるのも恐ろしい事なんだということを知った瞬間だった。
あたしは恐ろしいモノでも見てしまったかもように、ただ呆然と固まったまま見つめていることしかできなかった。
「親父」
ソイツは言った。
宣言するように。
「こいつクビ」
まるで死刑宣告のようだと思った。