ma Cheri
ma Cheri

転校生、現る


玄関のドアが閉まる音で目が覚める。
重たい体を持ち上げ、リビングに行くとわずかに湯気を出す朝食が置いてある。
紅茶を淹れ、その朝食に手を付ける。テレビをつけるとあの曲が流れだした。


この広い 広い 青空の下
君にはずっと 笑っていてほしいな
僕の大切な 愛しい 君

僕が君に触れたならば
君は笑ってくれるだろうか
幸せになるだろうか

嗚呼 早く君に 会いたいな
僕の大切な 唯一の 君


何度聞いてもクサい歌詞だと思う。
こんな曲を書いたのが自分によく似た、自分の父親だということが疎ましくてたまらないことがある。
正直小さいころに死んでしまったからどんな人だったかなんて覚えていない。
だから『楢山龍希』私にとって、無関係な人にほど近い、それが私の父親だ。


紫色の紫に恵みの恵、そして一里の里で紫恵里(シェリ)。

ほんとにふざけた名前だと自分でも思う。
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