ma Cheri
RYUKI NARAYAMA
早退してバスに乗った時ほど運転手さんの痛い視線ってない。
だから私はふらふらと家に向かって歩き出した。
そんなときに目に入ったのは少し古びたCDショップだった。
個人経営だからか最新曲を置いているというよりは昔懐かしの名曲を置いている感じ。
こんなところには絶対おいてある。
楢山龍希の『ma Cherie』。
きっとママにあてたラブソング。
ほんとにキザな歌詞。
馬鹿みたい。
「何か…お探しかね??」
パッと顔を上げると優しい笑顔で私を見つめるおじいさんがいた。
「楢山龍希かぁ…彼はいい歌手だったね。といっても私の息子が好きだったんだがね?」
ふぉっふぉとおじいさんはあごひげを整えながら笑っていた。
「すっすいません。私…帰ります!」
慌てて私はCDショップから飛び出した。
なんであの人のCDなんか見ていたんだろう。
自分が分からない。