ma Cheri
「行ってきます」
誰も居ない殺風景な部屋に向かってつぶやく。
私を見つめるのは黒縁の枠に入り、優しく微笑んでいる『楢山龍希』だけだ。
家の鍵を閉めて、歩きなれた通学路につく。代わり映えのない毎日、そして自分。
代わることなんて何一つない、
そう思っていた。
「シェリー!おっはよ!」
「玲ちゃん。おはよー」
私が唯一心を開いているといっても過言ではない親友の真崎玲菜。
きれいな顔立ちだが、姉御肌で頼りがいがある。
すごくモテるのに誰とも付き合う気がないらしい。
「シェリは今日もかわいいっ!大好きだぞ!」
玲ちゃんといると安心する。それともう一人、安心するのが…
「シェリ、玲菜嬢おはよ~。今日も一段と仲良しですな~」
小野瀬快。うちの高校のサッカー部期待のエース。
顔もかっこいいからすごくモテるが、本人は現在サッカー以外に興味はないらしい。
ちなみに私と快は幼馴染。
「そういえばさ、今日うちらのクラスに転校生来るらしいんだよ!」
「へー、そーなんだー」
「えー、お前ちょっとは興味持てや。ほんとつまんねぇ女だなぁ、玲菜嬢は。」
きっぱりと冷たく言い放った玲ちゃんに対して快は両手を上げ、頭を左右に振り呆れているようだ。
転校生かぁ…私も興味ないな。
「やべ、朝練始まる~!ってことでまたあとでな!」
そういって快は自転車に跨り、さっそうと去って行った。朝からなんともさわやかな男である。