ma Cheri
パチリ、と電気をつけるとそこには無数の音楽機器のそろった部屋だった。
「パパはね、あの椅子に座りながら曲を書いていたわ。シェリが生まれてからはよく膝の上にシェリを乗せながら曲を書いていたわね…」
私はパパの膝の上に座っていたことがあったんだ。
覚えていないのが少しさみしいな。
「あの、楢山のお母さん。」
鍵谷くんはおずおずとママに向かって話しかけた。
そんな鍵谷くんにママは優しく微笑みかけた。
「あの扉はなんですか?」
そういって鍵谷くんが指さしたほうには扉があった。
「するどいわね~。シェリに一番見てもらいたかったのはあそこなのよ。」
ママはその扉にゆっくりと近づき、にこにこと笑いながらその扉を開けた。