─仮面─偽りの微笑み

「棗さん、あの…」



「買い物」



「買い物ですか?」



「出来るんだろ?料理」



「はっ、はいっ!」



何で言いたいこと解っちゃったんだろ?なんて考えつつ、料理って何作ったらいい?!と焦る繭璃。



そんな繭璃を横目に、にやけ顔がおさまらない棗。



「ハンバーグ…食いてぇ…」



ボソッと呟き横目で繭璃の様子を伺う。



「ハンバーグ…あのっ!棗さん?」



ハンバーグと小さく言いながら、うんうんと頷いていた彼女がパッと俺の方を向いた。



「ん、何?」



「えっと、お家に寄ってもらいたいんですけど…」



「あぁ、いいよ」



「ありがとうございます♪」



嬉しそうな繭璃を見て、棗もまた知らず知らず笑みを浮かべていた。



何かくすぐったいな、こんな気分初めてだ。



偽物の笑顔ではなく、自然に笑えている自分に驚き、自分を変えてくれた彼女を大切にしたいと思う。



誰かをこんなにも愛おしく感じた事なんて、一度だってなかった棗にとって、繭璃の存在はとても大きな物となっていた。
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