─仮面─偽りの微笑み
◆俺だけのキミ
翌朝、目覚めた俺は隣に眠る筈の繭璃の姿が無い事を不思議に思い、ベッドから起き上がった。
「…繭璃?」
寝室を出てふらふら歩く。
キッチンに近づくにつれ、漂う香りに俺の脳も目覚めていく。
キッチンでは、シンクの前に立つ繭璃がいた。
「…はよ…繭璃」
後ろから抱きついて、彼女の髪にキスを落とした。
「あっ…おはようございます棗さん♪」
「何やってんだ?」
彼女はスルリと俺の腕をすり抜け、テーブルへと向かった。
テーブルには唐揚げや卵焼き、きんぴらその他諸々が並べられていた。
そして、それらを楽しげに入れ物に詰める繭璃が目の前にいる。
「運動会でもあるのか?!」
「へっ?」
「や、弁当だろそれ」
箱に詰められたそれはまさにお弁当。
「だって…今日は出掛けるんですよね?」
そう言って、少し遠慮がちに俺を見つめる。