─仮面─偽りの微笑み
「出かけるけど…」
「今日のお昼は外でコレを食べましょう!」
「いいけど…暑いし…」
「いいんです!保冷剤もたっくさんあるし…それにそういうデートしてみたかったんです!」
一生懸命な繭璃がいじらしい。
「ふっ…そうかわかった」
途端に、ぱぁっと花が咲いたように笑顔になる。
嬉しそうな彼女の頭を撫で、俺も微笑んでいた。
───…
──…
俺達はお弁当を車に積み込み、マンションを後にしていた。
「ところで棗さん?今日は何処へ…」
「海」
「海?!えー?!わっ、わたし水着持ってきて無いですよ?
」
慌てふためく繭璃。
「水着なんて着れねーだろ」
「…な、そりゃあスタイルなんて良く無いですけど…わたしだって…」
少し涙目になりながら、ぶつぶつと呟く繭璃。
「ちげーよ…わかんねぇ?」
信号待ちの車内で、彼女の胸元に指先を滑り込ませた。
「ここにあるの…なーんだ」
「ん?」
と小首を傾げた繭璃だったが、次の瞬間には「あっ」と小さく声を発し、頬を紅く染めていた。