─仮面─偽りの微笑み

「なんなら今すぐ水着買ってやろうか?」



「棗さんのいじわるっ!」



紅くなった頬を″ぷくっ″と膨らませながら、胸元を押さえ軽く俺を睨む繭璃。



胸元に咲いた、幾つもの小さな紅い花。



所謂キスマーク。



胸元以外にも咲いてんだけど…コイツは知らねー。



んなもん誰にも見せるかってーの!!



「お前の水着姿…誰にも見せたくねぇ…お前は俺だけのモンだから」



信号が青に変わり、俺はアクセルを踏み込んだ。



俺って″ちいせぇ男″だな…と小さく溜め息を吐き出し、隣で微笑む繭璃にチラリと目をやった。



俺の言葉に拗ねたり笑ったり、そんな彼女を愛おしく感じた。



『俺だけのモノ』



この思いだけは、何があっても譲れねーな…。



そんな思いを胸に抱き、彼女の小さな手を片手でそっと握り締めた。



「棗さん危ないですよー?」



「いいんだよ!」



なんて言いながらも嬉しそうな繭璃に、俺のテンションも上がっていった。
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