─仮面─偽りの微笑み
「ほら、行くぞ」
荷物を片手に繭璃の手を引き、ズンズンと歩き出した俺。
「わあっ!棗さんっ待ってくださいよ」
「…我慢の限界がそこまてきてる…このままだとお前をこの場で押し倒しそうだ」
「………つ…」
握った手が、一気に熱を持つのがわかった。
「ここでもいんなら止まるけど?」
止まる事なく喋る俺に、彼女は必死で着いてくる。
少し振り向いて口角を上げる俺。
止まりかけた俺の背中を押す繭璃。
「や!とっ止まらないでくださいー」
クスクスと笑う俺に手を引かれた彼女の、「いじわるっ…」と言う呟きを背に、足早にその場を後にした。