─仮面─偽りの微笑み
ただ快楽に身を任せ、情事に溺れているんじゃない。
彼女だからこそ…酔いしれ、溺れていくんだ。
共に果てた後ですら、余韻に浸る間もなく欲しがる俺に、虚ろな瞳で答えてくれる繭璃。
蝶が、花の蜜の甘い香りに誘われるように、俺もお前に誘われるんだ。
「ごめんな…」
「ううん…謝らないで…ください…わたし…うれしいですこんなに求められて…」
幾度となく昇りつめ、ぐったりとその身体を横たえた2人。
棗は満ち足りていた、好きな女を抱く…それがこんなにもいいものだと思ってもみなかった。
心も身体も満たされた2人は、絡まるように抱き合い静かに瞳を閉じた。
───…
──…
「……ん…?」
重い瞼を開け、気怠い身体をゆっくりと起こすと、薄暗かった辺りが突然″ぱぁっ″と照らし出された。