─仮面─偽りの微笑み
「な…に…?」
棗の腕の中で、先に目覚めた繭璃はリネンを身に纏うと、窓辺へと足を向けた。
「…ぁっ…」
繭璃の瞳に映ったそれは、夜空に大輪の花を咲かせた花火。
─ふわり
棗の香りと温もりに、背中から抱き締められていた。
「……ぁ…棗さん」
「何してる…?」
柔らかな髪と肩口に口づけると、棗は繭璃に問いかけた。
「棗さん?花火…綺麗です…今日はお祭りなんですね」
次々に打ち上げられる花火を、うっとりと眺める繭璃。
「あぁ…此処からは良く見えるだろ?お前に見せたかったんだ」
「あの…もしかして…今日のためにこの部屋を?!」
「こんな日だ、今日の今日には部屋はとれねぇ…前々から頼んでた…この部屋に泊まらせてくれってな」