─仮面─偽りの微笑み

「…倒産の危機だ棗」



何時もの強気な姿勢はそこには存在せず、目の前には弱々しくうなだれている男。



情けねぇ…。



「んなもん知るかよ…」



苛立ちを隠せない俺は、親父を睨みつけた。



「はぁーっ…聞いてくれ…″南條財閥″…お前も知っているだろう」



大きなため息を吐き出した親父は、ゆっくりと話しだした。



「あぁ…名前くらいはな…で、その南條財閥が何?」



嫌な予感がし、眉を潜め聞き返した俺に親父は言った。



「南條の会長さんが融資を申し出てくれている」



「………」



怪訝な顔で見つめる俺に親父は言った。



「…お前と孫娘の麻里香さんの見合いが条件だ」



「はぁーっ…んなことだろうと思った」



「棗…見合いは手付けだ…結婚が本格的な融資の条件なんだ」
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