─仮面─偽りの微笑み
結婚?!何を馬鹿な…俺の思考が一瞬停止した。
「は、結婚…って……冗談だろ?」
いつになく真剣な親父の眼差しは、嘘や冗談ではないと物語っていた。
「てめぇでどうにかできねーのかよ!何時ものあんたどこいったんだよ…なぁ親父!!」
身を乗り出し言った俺に対して、「すまん…」としか言わない親父。
「無理だ…俺はあいつを繭璃を手放せねー…親父だってわかんだろ?お袋手放せんのかよ!」
ガクッと肩を落とし、親父は言った呟くように…。
「………無理にとは言わない…」
「…ったりめぇだろ」
と唸る俺を力無く見つめる親父。
「……お前の返事一つで…社員の行く末が決まる…」
「な…んだよ…それ…やっぱひでぇ男だよ…あんた」
一気に脱力した俺は、ソファーに倒れるように身を委ねた。