─仮面─偽りの微笑み
「今晩は、天城と申しますが、繭璃さんいらっしゃいますか?」
時刻は、午後7時を少し過ぎるくらいだった。
「え……天城…さん?」
「あっ…はい、そうですが…」
電話口の女性の声が、一瞬強張ったのが気になる。
女性の後ろに誰かいるらしく、男の声で小さく『代われ』と聞こえてきた。
父親だろうか?
「もしもし…棗か?」
その声には聞き覚えがあった。
「え……?!」
「繭なら…電話には出ない…お前にも会わない」
「はっ?…暢さん…どう言うことだよそれ…」
「今日の見合いの事を話した…お前の事も忘れろってな…」
「…ん、だよそれっ!!」
冗談じゃねぇ…たかが見合い一つで、簡単にアイツを手放してたまるかよ。