─仮面─偽りの微笑み

「どうしたのっ何?!」



焦ったような美麗の声に、母も何かを悟ったようだった。



「お兄ちゃんがお見合いしたって本当なの?政略結婚するって!!」



「………えぇぇぇー…!!」



「ま、ママ?!」



どうやら母も知らなかったらしく、耳がキーンとする程電話の向こうで叫んでいた。



「──パパに聞いてみます」



「………ヒッ…」



怒りを含んだ低い声…母の変わりように、美麗は小さく悲鳴を上げた。



「じゃあね」



「あっ!ママっ…て切られちゃった」



速攻パパは責められだろうな…。



母に詰め寄られ、オロオロと狼狽える父の姿を想像してみた。



「…ぶっ…まぁ何時もの事か」



「何が?」



クスクスと笑う美麗に、繭璃は何の事かと小首を傾げた。

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