─仮面─偽りの微笑み
立ち止まり振り向いた棗には、ユウリに見せる何時もの笑顔は無かった。
「……なつ君…」
そのまま何も言わず、棗と麻里香は去っていった。
「暢さん…何でですか?こんな酷い仕打ちあんまりです…きっと繭璃ちゃんは物凄く傷ついてる!なつ君も…」
ユウリは、暢に訴え涙を流した。
「ユウリ…愛だよ愛…暢の繭璃ちゃんと棗に対するな、だが少々重すぎてこんな事態を引き起こしてしまった」
「全部俺のせいだよユウリちゃん…棗を試したんだ…この状況であいつがどう動くか…繭の為に」
「そんな…なつ君を信じてない証拠じゃない!」
ユウリは泣きながら暢を睨んだ。
「そうとられても仕方がない…でも棗の事も幼い頃から見てきた、あいつだって可愛い事に違いはないんだ、だからこそ試したあいつらの本気と絆を…」
「だからって…うぅっ…」
涙するユウリの背中をさすり、劉兒は呟いた。
「愛は時に残酷…だな」
静かな部屋には、ユウリの泣き声だけが響いていた。