─仮面─偽りの微笑み
事の始まりは暢さんの重すぎる愛情から。
父に似た兄ならきっと、全てを捨ててでも繭璃を選ぶ…そう思ったのだろう。
だが暢さんの予想は大きく外れてしまった。
兄が捨てたのは繭璃。
悪魔にも、鬼にもなれなかった兄は、全てを捨て切れ無かったのだろう。
今更このお見合いが嘘だったと言われた所で、後には引けなくなってしまった。
兄を試すにしても、こんな大掛かりな嘘をつかなくても、他にやり方は無かったものか…。
傷つき泣き続ける親友の姿に、美麗も心を痛めていた。
自分は愛する人とこうして居られる。
「あたし…暫く修一さんと会わない…あのこがあんなに傷ついてるのに自分だけ楽しくなんてできないよ…」
美麗は修一にそう告げた。