─仮面─偽りの微笑み

「繭璃…帰ろ?」



ぼうっと遠くを見つめる繭璃に、美麗は声を掛けた。



「…へ?…あっ、うん…」



席を立ちゆっくりと歩きだす繭璃。



悲しげに微笑う繭璃。



きっと、自分ではちゃんと微笑えていると思ってるんだね…。



美麗はにっこりと微笑み繭璃の手を引いた。



たわいもない話しをしながら2人並んで歩いた。



校門を抜けた所で繭璃の足が止まった。



美麗は、立ち止まり見つめる視線の先を追う。



繭璃が真っ直ぐに見つめる先に…その人はいた。



「…棗…さん?」


「お兄ちゃん?!」



独特のオーラを身に纏い立つ姿は、離れていてもその人だとわかる。



来い焦がれた愛しい人の姿に、繭璃は胸が締め付けられた。



離れているせいで、棗の表情は読み取れない。



こちらを見ていたのだろう、ゆっくりと歩みを進めてきた。
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