─仮面─偽りの微笑み
美麗が修一にぐっと詰寄った時だった。
ふっと会場が薄暗くなり、ざわつき始める。
「皆様長らくお待たせ致しました、本日の主役の2人の登場です」
司会の声に、一斉に前方の壇上へと視線が集中する。
「美麗ちゃん…」
ぎゅっと美麗の手を握る繭璃は震えていた。
「繭璃」
美麗はその手をきつく握り返した。
盛大な拍手と共に、手をとりあった2人が壇上へ姿を現した。
「棗さん…」
拍手の音に紛れ聞こえた声に、美麗は横を向く。
隣では繭璃が瞳を潤ませ、棗をじっと見つめていた。
マイクの前に立った棗がにっこりと微笑む。
「ん…?あの微笑み…?!」
兄は何かしようとしている!
美麗は直感的に感じ、修一を仰ぎ見た。