─仮面─偽りの微笑み

美麗が修一にぐっと詰寄った時だった。



ふっと会場が薄暗くなり、ざわつき始める。



「皆様長らくお待たせ致しました、本日の主役の2人の登場です」



司会の声に、一斉に前方の壇上へと視線が集中する。



「美麗ちゃん…」



ぎゅっと美麗の手を握る繭璃は震えていた。



「繭璃」



美麗はその手をきつく握り返した。



盛大な拍手と共に、手をとりあった2人が壇上へ姿を現した。



「棗さん…」



拍手の音に紛れ聞こえた声に、美麗は横を向く。



隣では繭璃が瞳を潤ませ、棗をじっと見つめていた。



マイクの前に立った棗がにっこりと微笑む。



「ん…?あの微笑み…?!」



兄は何かしようとしている!



美麗は直感的に感じ、修一を仰ぎ見た。
< 217 / 268 >

この作品をシェア

pagetop