─仮面─偽りの微笑み
修一は美麗にパチンとウインクして見せた。
「やっぱり…」
何が起こるのかは解らないが、兄が何かをしようとしているのは解った。
美麗は眉間を寄せ、マイクの前に立つ棗に顔を向けた。
「皆様、本日は私、天城棗と、南條麻里香の為にお集まり頂きありがとうございます」
棗はマイクに向かい喋り始めた。
「えー…本日私達は婚約のご報告をさせて頂く訳ですが…」
カメラのフラッシュが光る。
隣に並ぶ麻里香と見つめ合う棗。
「…棗さん」
繭璃は、今にも泣き出しそうな震える声で棗の名を呼ぶ。
壇上では、再び皆の方を向いた棗がマイクを掴んだ。
そして…くいっと口角をあげた。
「残念ながら…相手はお互い違うんだなぁ…」
その言葉に、皆の動きが止まり、一瞬にして会場は静まり返った。