─仮面─偽りの微笑み
「親父ー会場は?」
自分には冷めた目をする息子に苛立ちながら、劉兒は答える。
「会場なら大丈夫だよっ!皆あの2人に集中してっからな」
「なんで?てかあの男の人って誰なのお兄ちゃん?」
後を追ってきた美麗が尋ねると、繭璃も興味あり気に棗を見上げた。
「あいつは麻里香の執事だよ…」
「執事??」
「で、若松グループの次男…若松 雪那【ユキナ】」
「"雪那"って女の子みたいな名前だねー」
ニコッと微笑む繭璃に、みな一気に気が抜ける思いだった。
「はぁー…あんたって…」
「ん?なぁに美麗ちゃん」
棗は、きょとんとする繭璃を引き寄せ、柔らかな髪に口づけた。
「何でもねぇよ…お前が可愛いってだけじゃね?」
「うっわ!キザーって繭璃も照れないの!!」
「ふん、言ってろ」
「だぁーっ…やめろお前らっ!それよりちゃんと事の成り行きを説明しろよ…」
劉兒に言われ、チラッと暢を見た棗が口を開いた。