─仮面─偽りの微笑み
「ま、要するに…俺は最初から見合いは偽だって知ってたって事」
「はっ?最初からって…まさか…俺がお前に頼んだあの時もう…」
「んー、知ってたよ…ね?暢さん」
「…すまん劉兒」
暢は、両手を顔の前で合わせると、申し訳無さそうに劉兒に謝った。
「何がどうなってる…説明しろ」
劉兒に促され、事の経緯を暢が話し出した。
「この間麗子さんに呼ばれたのが始まりだよ劉兒」
「あぁ…あん時か」
「あぁ」
昔から、仲の良かった南條会長夫妻と棗の祖父母。
久々に顔を揃えた酒の席に、劉兒は呼ばれていた。
「いかない」と、さっさと帰ってしまった劉兒の代わりに、暢が顔を出していた。
「あの時…俺が漏らした一言を会長と麗子さんが聞いていたんだ」
南條会長と棗の祖母麗子…2人とも最近は面白い事が無い!と愚痴りあっていたばかりだった。
「はぁーっ、お前何言ったんだよ…」
深いため息を吐き出し、劉兒は暢に問いかけた。