─仮面─偽りの微笑み

あの時…兄の身勝手さに腹を立てていた美麗は、冷静に周りを見る余裕が無かった。



「あの時言ってくれたの…俺を信じて必ず来い!って…だからわたしは今日ここに来れたの」



きゅっとドレスを握りしめる繭璃を、棗は優しく微笑んで見守った。



「…お兄ちゃんってキザー」



「お前ねぇ…」



「でもまぁ良かったよ!ちゃんと元サヤに戻ってさ」



そう言ってうんうん…と頷いた美麗。



「つーかさ…俺がコイツを手放すと思う?この一週間ちょっとは地獄だったぜ…あーっ、繭璃が足りねー!早く補充しねぇと可笑しくなるぜ」



そう言って繭璃を引き寄せた棗は、瞳を閉じ甘い香りを吸い込む。



「地獄って…離れてたのはたった一週間程度でしょ?大袈裟ねぇ…はぁーぁ」



美麗は呆れ顔でため息を吐き出した。
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