─仮面─偽りの微笑み

「…バカップル」



見つめ合う棗と繭璃に、呆れ顔で麗子が呟いた。



繭璃の髪を鋤きながら、棗は麗子に顔を向けた。



「もう帰っていいかな?麗子さん」



「まぁいいわ…あたしはその娘に会いたかっただけだから…今度はゆっくり会いしましょうね繭璃ちゃん♪」



妖艶に微笑む麗子は、とても棗の祖母だとは思えない程に若く美しく見えた。



その姿に繭璃はドキンとし、思わず頬を赤く染めコクリと頷いていた。



「…行くぞ」



繭璃の手を取った棗は、徐に立ち上がった。



「なつくんもう帰っちゃうの…?」



母ユウリの寂しげな声に、一瞬立ち止まった棗だったが、繋がれた小さな手の温もりが足を前に進めた。



「悪い母さん…また今度ゆっくりコイツと家に行くよ」



優しげな瞳を繭璃に向けた棗。



そんな息子の姿を目にし、ユウリは母として嬉しくもあり寂しくもあった。
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