─仮面─偽りの微笑み

とある高級デパートの中に2人はいた。



「あのっ棗さん?何故デパートなんでしょうか?!」



可愛らしく小首を傾げた繭璃に、ふっと笑って棗は答える。



「色々いるだろ?お前のもんが」



「私の物…ですか?」



「そっお前の物…俺の部屋には何もねーからなぁ」



さらっと言ってのけた棗に、繭璃は瞳をパチクリさせて立ち止まった。



「なんだ嫌なのか?じゃ帰るか」



「わぁっ!いっ嫌じゃないですっ…ただびっくりしちゃってごめんなさいっ」



俺だって驚いてるよ、まさか自分がこんな行動に出るとはな…。



「嬉しいです♪」



にっこりと嬉しそうな笑顔を向ける繭璃につられ、棗は自然と笑みがこぼれた。



こんな風に女に笑ったのは初めてだな…そんな事を思いながら、棗は繭璃の手をとり歩き出した。
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