─仮面─偽りの微笑み
好きな人…その言葉が、棗には何だかくすぐったかった。
今まで他の女達に言われた"好き"とは、明らかに違う。
繭璃の口から自然に発せられた"好き"に、棗の心はぐっと捕らえられてしまった。
ありきたりの言葉なのにな…
人目も気にせず、棗はその場で繭璃を引き寄せた。
「きゃっ!なっ棗さん?」
「俺も好きだよ…」
囁いた耳元が、かっと熱をもつのが解り棗はクスリと笑った。
「行こうぜ」
真っ赤になっちゃって可愛いヤツ…。
自分にも、こんな感情があったのかと驚きながら、棗は繭璃の手を引いた。