刑事の秘めごと~仮面編~
あの方って敬うくらい偉い人間なんて…こいつくらいしかいねぇからな…。
「…お仕置き…だね…」
永山がいきなり、あたしの腕を掴んだ。
「…何しやがる」
それでも全く動じない。あたしも刑事だ。こんなヒョロ男くらい倒すのは朝飯前だ。
「藤井君は皆に任せたよ」
永山はクラスの人間にそう言って、あたしの腕を引っ張る。その瞬間ー…。
「…んぐっ!!?」
口と鼻を、ハンカチで塞がれた。
これはっ……。意識が朦朧としてくる。恐らく、ハンカチに薬品が染み込ませてあったんだ…。
油断した…。くそっ…。まさか、学校で犯罪犯してくれるとは思わなかった…。
でも今は藤井だけでもっ…。抜けていく力を振り絞って、口と鼻を塞ぐ永山の手を退かした。
「…っ…藤井!!保健室に行け!!」
そう叫ぶと、藤井は首を振る。
「石井さんを置いて行けません!!」
ほー…。あたしの心配してくれたのか…。やっぱり優しい奴だな。
「助け…呼んでこい!保健室に…スーパーマンがいるから…よ!!」
「でもっ!!!」
「大丈夫…信じろ…」
そう安心させるように笑うと、藤井は頷いて走り出した。
それをクラスの人間が追いかけていく。
くそっ…藤井…逃げ切れよ…。灰…頼む……。
朦朧とする意識の中、藤井の背中を見送った。