刑事の秘めごと~仮面編~


「…離れっ…ろ…」


必死にもがくが、両手が縛られているせいで、されるがままだった。


「……私に身を委ねて…全て投げ出してしまえばいいのです…」


永山の言葉や手は、あたしを惑わす。すでに、抵抗する力も、意志も無くなりつつあった。


「……い……」


灰……。
あぁ、いつもなら見たいなんて思わない灰の顔が頭に浮かぶ。


「やめっ…て……」


助けて……。このままじゃ…あたしは…。
溺れていってしまう…。自分の闇に捕われて…逃げ出せない。


「誰かっ…助けっ……灰っ!!



―バタンッ


涙がこぼれ落ちる瞬間。部屋の扉が勢い良く開いた。



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