刑事の秘めごと~仮面編~
《灰努side》


「…………枝………」


何がどうなってんだ…?頭がついていけない。


枝が手錠で両手を塞がれてて、男の手が枝の服の中に入ってる。


「………は…い…」


枝は虚ろな瞳で俺を見上げた。その頬には、涙の跡がある。


名前を呼ばれた瞬間、胸が締め付けられるように痛む。


「…あなたを招待した覚えはないんですがね…」


永山は人差し指で、枝の体をなぞった。


「…ぁっ…………」


悩ましげに眉をひそめ、涙を流す枝を見た瞬間ー…。


―ブチッ


俺の中で、何かがキレた。刑事という仕事も忘れて、永山に殴りかかろうとした時…。


「…動かない方がいいですよ…」


永山は枝の首筋に、カッターを当てた。


くそっ…前に進めない。どうして…こんなに近くにいるのに…何も出来ないんだよ!!

悔しくて、血が出る程唇を噛んだ。




< 170 / 222 >

この作品をシェア

pagetop