刑事の秘めごと~仮面編~
「いてぇ…菜野香、あたしの頭にたんこぶねぇか?」
「…頭じゃなくておでこにあるよ…お姉ちゃん…」
そう言った菜野香のおでこにもたんこぶがある。
登校しながら二人でたんこぶを探し合っていた。
「あら〜枝真ちゃんに菜野香ちゃんじゃない。あら、どうしたの?それ」
近所のおばさんが、心配そうにあたしと菜野香のおでこを指差す。
「うちの鬼にやられました…」
「それはもう鬼のようで…。いや、母なんですけど…」
あたしと菜野香がまるで怪談を語るように説明すると、近所のおばさんは豪快に笑った。
「仲良いわねぇ!ふふっ…羨ましいわ」
そう言っておばさんは家に入って行った。
近所の人達は、あたし達家族を仲良い家族だって言った。
これは普通だと思ってたし、これからも当然、変わる事なんか無いと思ってた。
まさか、あんなにもあたし達の幸せが、脆く崩れ落ちていくなんて…思いもしなかった…。