刑事の秘めごと~仮面編~
「…今…なん…て…?」
帰り道、携帯に一本の電話がかかってきた。
「…菜野香っ…菜野香が!!」
お母さんの泣き叫ぶ声が電話ごしに聞こえる。
かけてきたのは父さんだった。
「菜野香が…死んだんだ…」
生気も無く、声が震えている。父さんはそれっきり何も言わなかった。
「冗談だろ…?菜野香は、簡単には死なねぇよ…あいつ…暴力女だぞ?死ぬなんて…」
そんなはず無い。あたしの事…皆で騙してるんだろ…?
そう自分に言い聞かせていた。足は気付けば早足で、最後の方は走っていた。
そんなはずない…ありえない…。じゃなきゃ夢なんだ…。
そう思っていても、目の前に見えるパトカーの赤い光り、救急車…それがあたしを現実に引き戻す。
やじ馬や警察官を必死に掻き分けて、部屋に飛び込んだ。