刑事の秘めごと~仮面編~


「…枝真ちゃん…だね…?」


刑事だろうか?若くて新米そうな男があたしの目線に合わせてしゃがんだ。


「………………………」


あたしは何も言わずに男を睨みつけた。


「俺は識柿 銀っていうんだ。まだ新米だけど、俺…枝真ちゃんに約束する」

「……約束……?」


怪訝そうに男を見るあたしを、男は気にしていないのか、笑顔だった。


「犯人…俺が捕まえる。絶対に、菜野香ちゃんが味わった苦痛や無念を…弔う為にも…」


男はあたしに小指を差し出す。あたしはその小指を黙って見つめた。


こいつだけだった…。菜野香の死をちゃんと考えてくれた人間は…。


だからかもしれない…。この人を信じよう…そう思った。


自分の小指を男の小指に絡める。そして約束を交わした。


「…約束……。でも、あたしは菜野香の事を他人に任せっきりにするつもりは無い」


指きりを終えて、小指を話す瞬間に決意した。


「…あたしも刑事になる。そいつ探して…復讐してやるんだ…」


それが…あしが菜野香に出来る唯一の事。


「…今は…それで良い…。強くなれ…枝真……」


男は優しく笑った。あたしの名前を呼び捨てにして、まるで…父親みたいに頭を優しく撫でた…。


『強くなれ…』


あぁ…なるさ………。あたしが…あの子の為に出来る事なんだから…。




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