刑事の秘めごと~仮面編~
「…そうだ…だから…つまずいてる時間なんか無い」
かつて、仲の良い家族で有名だったあたし達の家。そこはもう人の気配すらなくて、そのままにしてある。
勿論誰も住んでない。菜野香との唯一の思い出が詰まった家だから、この家は残したままにしてある。
でも…菜野香を失った場所だから、この家に住む事は出来なかった。
床に染み込む血痕はあの日のまま残っている。
菜野香じゃなくて、あたしだったら…。
何度も考えてはこの血を見て、考える事すら無意味だと思い知らされる。
もう…菜野香は帰ってはこないのだから…。
「だから…あたしは約束の通り刑事になった…。強くなった…」
それがたとえ…永山と同じ、復讐という醜い感情であっても…それを否定すれば、この道を選んだ自分自身を否定するのと同じだ。
なら…あたしは迷わずに進もう。菜野香…大切な…お前の為に……。