刑事の秘めごと~仮面編~


「…会員証を提示して下さい」


扉前に立つ男二人に、あたし達は会員証(偽)を渡す。


出来るだけ怪しまれないように普通に、平然な顔をする。


「あなた方は………」


男はそれだけ言って、会員証を凝視する。


あぁ…恐い…。この時間が果てしなく永遠に続くんじゃないかと思うほどに長い。


チラッと灰を見ると、笑顔だが笑顔が凍りついていた。


まずいっ!!
この沈黙…灰には限界だ!!


「本当…光栄ですわ」


突然喋り出すあたしを、灰は驚いたように見つめる。男も会員証からあたしに視線を向けた。


「あの永山財閥主催の仮面舞踏会に行けるなんて…。私、鈴白家でも公の場に出た事がありませんの。あ、拓朗さんも同じよね?」


満遍の笑顔を灰に向けると、灰はキョトンとした顔であたしを見ている。


こんの…鈍男め……。


「ねっ!!?」


さらに笑顔を浮かべると、笑顔の中の圧力に気付いたのか、コクコクと頷いた。



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