刑事の秘めごと~仮面編~
―バシャッ
「ゲホッ…ゲホッゲホッ…」
勢い良く湯舟から出てきたのは、あたしも良く知る人だった。
「………弓形さん……?」
目の前にいる人に目を見張る。湯舟の中からあたしをキッと睨みつけてくる弓形さん…。
手には家庭用の包丁…。
「…気付かれちゃったみたいだわぁ…。そのまんま寝ていたら良かったですのに…」
弓形さんがあたしに向けるのは、あたしの命を狙う鋭利な刃物と、殺意のこもった瞳だった。
「…どうして…弓形さん…」
いや…。どうして…じゃないな…。やっぱり…だ。
どこか、心の中で予感していた。まさか…と…。
認めたくなんか…なかったのに…。