刑事の秘めごと~仮面編~


「…刑事さんはお気づきなんでしょう…?あの話をしてから、刑事さん様子がおかしかったですもの」


犯人にそれがバレてるようじゃ…。


「あたしもまだまだだな」


腑甲斐無くてしょうがない。私情を挟むなんて…。


あたしは刑事だ。全てを疑ってかからなきゃいけなかった…。


「…弓形 花衣さん。あなたは何を恨んでいたんですか?」


弓形さんの優しい笑顔が…あんなに醜く歪んだモノになってしまう程…。


あなたは何を恨んでいたの?


「…子供が欲しかった…。ただ純粋に…あの人の子供が欲しかった…。でも…私は不妊症でね…。あの人、他に女作って…その女の子供をこの旅館の跡取りにって言ったのよ…」


悔しそうな…悲しそうな笑みを浮かべた弓形さんは、ゆっくりと湯舟から出た。


「…悔しかった…。私自身を否定された気がしたの…。だから…幸せな家族が憎らしかった。奪ってやりたかったの…幸せを…。だからあの子を殺した。誰でも良かった…」


心臓を何かで貫かれたように痛い。弓形さんの悲しみは、きっと弓形さんにしか分からないくらい深い悲しみだったんだとは思う、けど……。




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