刑事の秘めごと~仮面編~
「…あなたが…」
あたしが言いかけると、弓形さんは振り上げた手を止めた。
「あなたがそれを望むなら、あたしを殺してもいいです」
目をつぶって両手を広げる。
「何言ってんだ!!」
無抵抗なあたしに、灰は怒りと動揺が混ざったような声で叫んだ。
「…何…言ってるの…?刑事さん…本当に殺しますよ?」
目で見なくても分かる。弓形さんは…泣いてる。心を痛めて…泣いてる…。
「あなたが犯した罪は…本当に償っても償いきれません!!でもっ…あなたが償わなければ…あなたと同じように、幸せを奪われた家族はずっと傷を背負っていかなきゃいけないんです!!」
もっと生きたかったはずなのに…。もっと……。
「あなたは…その苦しみを…あそこの家族に負わせたんです…。これ以上傷付けては駄目です!!あの家族の為にも…あなた自身の為にも!!」
「あっ…う…あああああっ!!!」
弓形さんは涙をボロボロと流して、包丁を手放した。