黒猫*溺愛シンドローム
“つい”だぁ?
いっそう強く睨み付ける私を、きょとんと見つめていたかと思うと、
「ごめんね。可愛いかったから、思わず…」
やつは、いつもの笑顔で、更にわけのわからないことを口にした。
「はあぁっ?」
私の声が、誰もいない教室に響き渡る。
何それ。信じらんない。
そりゃ“王子様”だから、言い慣れてるのかもしれないけどさぁ。
今日、初めてしゃべったような女にまで言う?
……やっぱり、嫌いだ。
これ以上、関わりたくない。
プリントもできたことだし、もう帰っていいよね?
「待たせちゃってごめんね。ありがとう。私はこれで…「浅海さんってさ、」
立ち上がりかけたのに。
「髪、キレイだよね。」
「は?」
脈絡もない、意味不明発言によって引き止められてしまった。
「黒くてつやつやでサラサラで…」
言いながら、さりげなく手を伸ばしてきて……
「ずっと、触ってみたかったんだ。」
私の髪をすくいながら、にっこり笑った。