黒猫*溺愛シンドローム



「……えっ?」


小さな呟きが聞こえたのと同時に、


「なっ…ちょっ…」



私の体は宙に浮いていた。

逃れようとするも、当然許されるわけもなく……



「動けないんでしょ?
運んであげるから、ちょっとじっとしてて。」



すぐ近くで聞こえた声に、たちまちカァーッと熱くなる。

フリーズする私のことなどおかまいなしに、王子はゆっくり移動する。



「軽いよねぇ…って、それより、なんかスカート短くない?」


「なっ…どこ触って…」



私を抱える手がずれて、スカートの裾…というより脚そのものに触れそうになって……

とっさに体をよじったものの、



「ぅわっ」


「ほら。じっとしてないと落ちるよ?」



バランスを崩して、慌ててしがみつくはめになってしまった。



「……なんか、この体勢、いいね。」


「なっ…」


「だって、浅海さんが俺に抱きつくことなんて、そうあるもんじゃないもん」





……そう。

私は今、俗に言う
“お姫様抱っこ”をされていて。


落ちないように、王子様の首に腕を巻き付けるような格好になっている。




仕方なく、だからね??


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