黒猫*溺愛シンドローム
「はぁっ?」
聞こえてきた“不適切な発言”に、思わず顔を上げた瞬間。
「……んーっ」
塞がれた唇。
目の前には、“王子様”のお顔。
柔らかい感触が、私を支配していた。
「……ごめーん。しちゃった。」
唇を離して、無邪気に笑うその顔。
嫌味なくらいに綺麗だけど、でも……
「な、な…何すんの?」
それに騙されてはいけない。
「浅海さんの唇、柔らかくて気持ちいいよね。
だから、見てるとつい触れたくなっちゃって。」
「はぁっ?」
「でも、なんか…」
にこにこ笑顔が、ふいに真面目な顔になって……
「ちょっ…」
再びぐっと近づいてきた。
「でも、なんか匂いが…昨日までとは違う香りがする。」
言いながら、私の唇を指でなぞる。
ゾクッと、変な感覚が走った。
「り…リップ、変えたの。たぶん、それだと思う…って何?なんで近づいてくるの?」
「んー?甘い香りに誘われて?」
「……なっ」
「蝶の気持ちがよくわかったよ。」