黒猫*溺愛シンドローム
「……っ」
何なの?この展開。
“王子様”は、私の髪を弄んでいて。
サラリと指からこぼれ落ちるのを見ては、満足気に微笑んでいる。
その瞳は、びっくりするくらいに柔らかくて温かい。
近い距離。
妙な空気。
なんか、すごく落ち着かない。
悔しいけど、コイツはやっぱり綺麗な顔をしていて。
纏っているオーラは、尋常じゃないから。
ただでさえ、私は他人と近づくのが苦手なのに……
早くここから逃げたい。
なのに、動けない。
「……そっくりだ。」
ぽつりと呟かれた言葉に、はっと我に返る。
……何?
「……どうしよう?本気で欲しくなっちゃった。」
「何言って……」
私に、と言うよりも自分に言ってるみたいで……
私のことは見えていないし、聞いていない。
……ぼんやりしてる今がチャンスだ。
「手、放して。」