黒猫*溺愛シンドローム




「好きです。つき合ってください!」




……やっぱり、かぁ。



放課後。


生徒会室に向かう途中で、女の子に呼び止められて。


「話がある」と、空き教室に促された。

そしたら、案の定……


目の前には、少しだけ顔を赤くして。
でも、まっすぐに俺を見つめる女の子。

あ。この子は確か…
ダイスケが可愛いって騒いでた子だ。

隣のクラスの……






……ダメだ。


申し訳ないけど、名前が出てこない。



「……風見くん?」



黙り込む俺を、不安気に覗き込む瞳。


…うん。確かに“可愛い”と思う。


ふわふわで小さくて。
お人形さんみたい。


でも……



「ごめんね。気持ちは嬉しいんだけど…」



それに応えることはできない。

どう頑張っても、“可愛い”以上の感情は湧いてこないから。


この子を見ていても、心は動かない。

身体が反応しない。


だって……



「好きな子がいるんだ。」



俺が好きな“女の子”は、


1人だけ、だから。


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